自然の「法」に学んだアロママッサージ

自然の「法」に学んだアロママッサージ

順法庵 空 主宰後藤聡子先生(本校教員)

温かい想いを伝えるボディランゲージ

 後藤聡子先生が主宰する『順法庵 空』は、常に3か月先まで予約が埋まっている。提供しているのは、アロマ理論と鍼灸を融合させた施術だが、人気の秘密はその技術だけにあるのではない。
「アロママッサージの魅力はボディランゲージなんですね。お客様に触れることで、その方のメンタルに大きく作用していくことができるのです。
患者様の心の中にある赤ちゃん時代の記憶、お母さんに抱っこしてもらったことや、背中をさすってもらった記憶に対して、私たちが発する、癒してあげたいとか治してあげたいといった温かな気持ちが伝わって、効果を発揮していくのだと思います」
 優しい口調はまるで、自然界の精霊のささやきのように降りてくる。

山火事を自ら起こすユーカリの知恵

 そんな先生が中和で教えているのは、日本でも特に人気が高いイギリス式のアロマテラピーマッサージだ。アロマテラピーは、植物由来のエッセンシャルオイルを使い、香りを嗅いだり、マッサージオイルに混ぜたりして、身心ともに整える技術で、イギリスでは昔から民間療法の一つとして親しまれている。ホリスティック医療(身体全体のバランスを整える方法)の一つと捉えられている面もあり、鍼灸のような東洋哲学をベースとする医療との親和性は高い。
 先生自身も「東洋思想の中に、人間の本質があるのではないかと、大学時代に考えていました。治療家をめざすというより、自然の法を学びたいと思いました」と言っている。
 仏教では、人間の計らいごとを超えた、自然の真理=変わらざるものを「法」と呼ぶ。さんずいは水、右側は去るで法、これは、水が高いところから低いところへ流れることを指す。何千年経っても変わらない真理の象徴ゆえに、水に去ると書いて「法」としたのである。
 だから後藤先生は、アロママッサージのプロに必要な知識、手順は当然しっかり教えるが、プラス、世界を「巡礼」して学んだ、「自然の法」についても伝えてくれる。
「あるとき私は、ユーカリの原生林に入って、ユーカリが支配する世界を体感しました。ユーカリは自然発火して、火事を起こし、樹皮を燃やし、灰をおとし、その養分がまたユーカリを育てるといった、循環をつかさどっています。樹皮が非常に燃えやすく、火がつくと幹から剥がれ落ちるので、火事を起こしても、幹の内側は燃えずに守られています。根に栄養をたくわえており、火事の後も成長し続けることができ、新しい芽をつけることもできる。すごい知恵であり、生命力です。
 ユーカリオイルには、抗菌、鎮静、鎮痛、空気の浄化など、とてもたくさんの効能がありますが、私たちはそれを単なる物質が与えてくれる効能と捉えてはいけない。自然界の恵みと考えるべきです」
 鍼治療をする際も、後藤先生は、患者さんの症状に対応するオイルを調合し、温め、香りのなかで施術する。使用するハーブやスパイスは、産地に足を運び、自宅の庭に種をまき、あるいは移植して育てたものばかり。ケミカルオイルは使わない。
 アロママッサージを入り口に、東洋医学の真髄に迫る、後藤先生の授業はぜひ受けるべき授業だ。

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