ソフトボールの五輪金獲得を支えたトレーナー

ソフトボールの世界大会 金獲得を
支えたトレーナー

実業団ソフトボールチーム・トレーナー志村昌彦(しむら あきひこ)先生柔整科卒業生/アールイー整骨院(Re整骨院)院長

選手の自主トレに帯同し、一緒に茶畑を駆け降りる

 2023年の正月明け、志村昌彦さんの姿は福岡県にありました。ソフトボール界の大エース・上野由岐子さんらビックカメラの選手たちの自主トレに、トレーナーとして帯同していたのです。(ちなみにこの自主トレは『鴻江理論』で知られる有名トレーナー鴻江寿治先生主催のプロ野球合同自主トレ)
「選手のコンディションを見たりテーピングをしたり、どこかに痛みがあるようならケアするほか、練習にもずっと付き合います。
 今年は茶畑の長い下り坂を一緒に駆け下りました。下りきったら車で上まで移動して、また駆け下りるを何回も繰り返す。かなりきついです。筋肉痛になりますよ。
 そのトレーニングが、選手の体のどこにどのような影響を及ぼすかを直に共有することも大事なんで(笑)」
 真っ黒に日焼けした顔はアスリートそのもの。
 志村さんは普段から試合まで、心身ともに選手たちと共に戦うトレーナーなのです。

人として、礼儀正しさがなければチームでも通用しない

 志村さんは中和医療専門学校の柔道整復科卒業生。大学卒業後、やりたい仕事が見つからず飲食店でアルバイト生活をしていた頃、店の前にできた接骨院に勤め始めたことが現在に至るきっかけだと言います。
 「私はスポーツ推薦(バレーボール)で大学に入りましたので、スポーツ障害等をケアする柔道整復にはもともと縁がありました。それで院長に『どうしたら柔道整復師になれますか』と聞いたら、『専門学校で3年間勉強して国家資格を取得したら開業できますよ』と教えてもらい、これだと思いました」
 中和での学生時代は「とにかく整骨院を開業したい」という強い気持ちで、国家試験合格をめざして猛勉強。合格後、修行をさせてもらった千代田治療院(現在は閉院)の院長だった右近克敏先生が、スタッフからプロ野球等のトレーナーを多数輩出していたことから自然な成り行きでトレーナーを目指すことに。2009年に国家資格を取得した後、チャンスは2011年の秋に訪れました。
 「右近先生の勧めでプロ野球チームのキャンプに臨時トレーナーとして帯同させてもらいました。右近先生は2012年に他界されました、他界されるまでは中和の本科の講師として活躍されていたんですよ。
 トレーナーという立場での初キャンプで、凄い緊張のなか学んだのは、治療云々ではなく、まずはチームの中の一員として働くこと。何より、人としての礼儀正しさがないと、チームでもどこでも通用しないということでした」
 チームの一員として同じ目標を持って働くことと礼儀正しさは、言い換えるなら「信頼を得る」ということになるのではないでしょうか。礼儀正しくあることは、謙虚さと、相手を尊敬し、大切にする姿勢の表れだからです。
 プロとして実力があるのはあたりまえ、でも人として信頼されなければ、選手たちは大切な体に触れさせてはくれません。アドバイスも素直に聞き入れてはくれないでしょう。これはスポーツに限らず、どんな社会でも共通です。志村さんは最初のキャンプで、最も大切な基本を学んだのです。

 志村さんはプロ野球チームの臨時トレーナーを経験後、すぐに現在のビックカメラ(当時はルネサス)からオファーを受けて、翌2012年の2月からトレーナーになりました。
 当時のチームは、2004年アテネ、2008年北京でメダルを獲得した投手兼コーチの上野由岐子選手などの日本代表選手も所属しており、日本国内のみならず注目を集める名門チームでした。そこからオファーを受けたのは、トレーナーとして高く評価されたからなのではないでしょうか。

世界大会だけでなく、いつでも「特別」

 2012年から現在まで、トレーナー歴は11年目に突入。2021年に開催された世界大会にもソフトボール競技のトレーナーとして帯同。金メダル獲得のサポート役を務めました。

「10年間で印象に残っていることですか。世界大会2020での金メダルやリーグで優勝した時にはもちろん報われたと思いましたし、よく覚えています。だけど私にとっては、一瞬一瞬がいつでも特別です。アスリートってそうですよね。日々の努力とか、スタッフも含めたチーム全体の協力とかが積み重なって、結果につながるのだと思っています」

 ストイックに語る志村さん。トレーナーとして日々心掛けているのは、選手との対話とのこと。

「やっぱりツーカーの関係が大事だと思います。特にベテラン選手については、彼女がこう言っていたら(体の状況は)こうだなと、察せられることは多いです。ずっと一緒にいて、対話しているからこそ分かる、あ・うんの呼吸みたいなものですね」

 朝練では、前日に治療した選手がどういう動きをしているかをチェック。痛みがあるような場合には、練習の休止を勧めたり、病院の受診をコーチや選手に伝えたりなど、選手と監督等とのつなぎ役もトレーナーの仕事。

「選手が練習や試合に憂いなく、最善の状態で臨み続けられるようにしてあげるのが、私たちトレーナーの仕事。高い技量があるということは、故障を防ぎ、最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートすることだと思います。有名な鴻江理論も勉強して、治療に取り入れています」

 トレーナー歴10年を迎えた昨年4月、前橋市下小出町にRe整骨院を開業し、現在は、原則試合の時だけ帯同するカタチに。

「患者さんは、やはりアスリートが多いですね。大学駅伝の選手とかプロゴルファーとかにご利用いただいています。もちろん一般の方も来られます。腰や肩の痛みの治療が多いですね。
原因は痛みや違和感のある場所にあるとは限らないので、全身のバランスを見させていただき、お話をしながら施術するようにしています」

※ ※ ※

「トレーナーは技術や知識だけでなく、アスリートとの信頼関係がとても重要」と志村さん。そこには中和に在学していた頃に築いた、仲間との関係が生きていると言います。

「柔整科は皆とにかく仲が良かった。縁があって集まった仲間。皆が国家試験を通って開業する夢を持ち、横のつながりを大事にして、助け合って勉強していました。チームワークですね。トレーナーの仕事も整骨院での仕事も、じつは横のつながりが大事。
 中和の卒業生でよかったと思っています」

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